2022年6月5日日曜日

ククルス・ドアンの島を見てきた

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』|冒頭10分公開【6月3日(金)全国ロードショー】 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=JNvnkkri_qM
 ククルス・ドアンの島を見てきた。
 総評としては面白い。見るべき作品。
 原作の番外編的な1エピソードをちゃんと劇場版に仕上げている。100分を持たせるだけの仕掛けもあったし、ゴップやマ・クベという盤外キャラの活躍も楽しめた。ともあれ、戦闘シーンやアムロの成長物語についてはほかの人が語っているだろうことからスキップして、ほかの人が書かないようなことを書きます。

 本作、ホワイトベースのゴップ派閥からレビル派閥への乗り換えという、一年戦争のわりと重要な転機が描かれていました。YouTubeの冒頭10分で描かれている、残置諜者の掃討という任務はゴップからしたら自分の派閥のホワイトベースを守るために、楽な任務を振り向けたのでしょう。しかし、それを現場に伝える人選に失敗し(若くして出世しているブライトに嫉妬しているらしい士官様がイヤミっぽい顔で、命令伝達してますね)、これに「上は俺らのことがわかっていない」とブライトさんが反発。その反発がアムロらへ不機嫌という形で伝わってしまい、しこりになるもどかしさ。
 そのあと、派閥乗り換え事件が起きて同時並行でドアンの島で大事件が起きる。その大事件に自分が庇護しているホワイトベースが関わっていたとゴップは後で知ることになるのですが、普通に胃痛案件ですね。原作でゴップは宇宙に上がる直前のホワイトベースのことを「永遠に厄介者」と評したけれど、ドアンのエピソードが加わることで、この評に実感がこもり、味わい深いものになる。
 それにちょっと先の話なるけど、ホワイトベースはレビル派閥に乗り換えたものの、面倒を見てくれる彼らはソーラレイで派閥幹部もろとも消えてしまうのだから運がない。ゴップ派閥に残っていれば、親身になって面倒を見てくれて、戦後のアムロやブライトの処遇も大きく変わっていたんだろうねえ……。

 とはいうものの、本作はガンダムだけどガンダムではない。いうなれば、安彦が作ったシン・ガンダムって感じだった。
 というのも、かなり濃厚にアリオンやら巨神ゴーグやらクラッシャージョウやらの要素が混じっていたので、そういう意味ではガンダムではなく、安彦映画の集大成のように見えた。
 ここからネタバレが嫌な人は回れ右。

 ドアンの表情演出は巨神ゴーグの船長そのままだし、アムロの悪夢のシーンはアリオン、サザンクロス隊のドタバタは劇場版クラッシャージョウの海賊一味だった。
 集大成といえばエンディングをスナップ写真で締めるのも安彦的な演出だ。富野なら全員で走ってホワイトベースを見送る演出で締めるだろうけど、あえてそれをしないで静のスナップ写真で締める。映画的な感動より絵的な感動を優先しているからこその演出で、そこがアニメ監督の富野と、漫画家の安彦の違いなんだろう。動きの面白さより止め絵的な面白さを優先している。だから、富野はこの映画を見て俺が監督やっていればと思っているだろうなということも簡単に妄想できる。
 私自身、ちょっと引っかかっているのがそれなんですよね。ガンダムオリジンの漫画もそうなんだけど、安彦漫画とガンダムってわりと致命的に水と油な部分があって、その油の部分が富野やら当時の脚本家の力だった。安彦ガンダムは味噌味のラーメンを食べているのに味噌味の蕎麦を食べている気分になる。蕎麦は蕎麦でおいしいけど、ラーメンじゃない的な違和感がある。そのあたりはアニメというものがチームで作るものであって、個人ではどうにもならない部分で、だからこそアニメは面白いし、リメイクが必ずしも幸せではないことがわかる。

 とはいえ、蕎麦でもおいしければいいじゃんというのも正論。だから、これは面白い映画だし、見るべき作品ですという結論になる。さらにいえば、初代ガンダムシリーズを履修したあとに、安彦映画やアニメを履修してから見ると、もっと楽しめるんじゃないかな、ということ。わりと苦行かもしれない、とはあらかじめ書いておくけれど。

 余談。
 映画見終わったあとに、ヨドバシのホビー館でガンプラを見た。売り場は広いのに、悲しいほどに弾がない。ザク系がないのは映画のせいだろうなって半ばあきらめもつくけれど、ザク以外のジオン系プラモも全滅。初代以外のZやユニコーン、逆襲などなど歴代のジオン系も全滅している。ガンダム系が絶滅している割にマクロス系が残っていたけど、ボトムズ系は全滅。この差はなんなのか。人気の差か。ともあれこの状態で子どもたちがプラモを作りたいって思うようになるわけないから、将来の模型界のためにテンバイヤー死すべし、と思った。

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