2022年7月6日水曜日

時事2022/07/07 開戦から133日目 ~したらダメ症候群

本日、所用につき更新はお休みします。
代わりに、書きためていた駄文をペタリ。

太平洋戦争で米軍が分析した日本人(軍)の性質と弱点、今も通用する?その反響
http://togetter.com/li/1055720
山本七平botまとめ/【現場中堅幹部日本人優秀説への危惧】/"名人芸"に依存する日本と、"システム"に依存するアメリカ
http://togetter.com/li/614819

 日本人は子供を教育する時に「~したらダメ」と教えるから、子供が自分で思考する能力が低くなってしまうという話。
 「~したらダメ」は特定のシチュエーションにおいて有効な対症療法なので、シチュエーションが変わると有効ではなくなります。たとえば子供のあいだは有効な「~したらダメ」も社会人になると通用しないことが多くなります。具体的には「危ないことをしちゃダメ」という子供時代のしつけを順守していると、大人になってビジネスでリスクをとって儲ける能力が低くなってしまうわけです。
 逆にアメリカでは「自分で思考する」ように教育しているので、大人になってリスクをとって儲けることにタブー感がありません。ゆえに大人になると日米でリスクをとる思考に大きな差がついてしまうのです。

 日本の社畜の起源はこの「危ないことをしちゃダメ」という子供時代のしつけなのかもしれません。日本人のリスクを嫌う性向を利用したのがリストラというリスクを見せつけて、サビ残と賃金抑制を強制するブラック企業なのでしょう。
 「~したらダメ」思考にもよいところはあり、たとえばそれが日本人の高い倫理観につながります。法律で「~したらダメ」とやったら比較的守ってくれるわけですね。おかげで政府は警察にそれほど予算をさかなくても治安を守れます。
 逆にいえば、司法に予算を割くなり、もっと効率的な組織に改編すれば、国民の倫理観が多少低くても問題はないということになります。それが端的にあらわれているのが山本七平の砲兵の話で、思考力の高い人間をシステム作りに回せば現場に思考力の高い人間は必要なく、全体としては効率がよく戦争にも強くなるという話になります。

 このあたり、アメリカのSEと日本のSEの違いを説明することもできます。思考することを評価しない社会である日本では、できるSEもできないSEもいっしょくたに人月で数えて給料も一緒。逆に思考することを評価するアメリカではできるSEほど高給取りになりプロジェクトを主導し、成果をあげます。結果としてアメリカのシステムの方が使いやすくなり、競争力が高まります。日本製のOSやソフトが世界標準にならない理由のひとつでもあります。

 ところで、太平洋戦争の開戦時、日本政府はアメリカと戦えば負けるリスクが高いと考えていました。しかし、開戦ムードが高まってしまった状況で、アメリカに譲歩して「開戦しない」という選択をとると、政府の支持率が下がり、暴動になるリスクが高いとも考えていました。どちらの選択もリスクがあるなら、目先の確実な支持率低下のリスクよりも、アメリカと戦って負けるかもしれないリスクのほうがマシというのがおおざっぱな開戦の経緯です。
 情けない話ですが、開戦当時の日本の政府首脳の記録を読むと、それくらいのロジックしかありません。で、慎重派が「アメリカに負けたらどうするんだ」と問うと、積極派が「戦う前から負けることを考えるやつがいるか」と怒って(ひどいときには慎重派を暗殺して)議論を封殺します。未来を予想し、それに沿った戦略を考える立場の人間に未来を考えるなと強制するのですから、日本は政府も軍部も組織としてまともな判断ができなくなります。

 日本はそういうノリと勢いだけで開戦したので、講和のシナリオもなく、とにかくアメリカがあきらめるまで問答無用で戦い続けるという戦争方針になってしまいました。おかげで勝っていても負けていても講和を考えられず、物資の欠乏や飢餓で日本の継戦能力がなくなるまで戦い続けます。日本が敗戦を受け入れたのは、国内で飢餓が発生し、誰がどう見ても勝てないとわかってからです。
 困ったことに、暗殺をチラつかせて講和を邪魔していたのは組織ではありません。日本にもナチス党のようなものがあり、組織が暗殺をチラつかせていたら話は早いのですが、単純に「~したらダメ」を暴力的に表現した個人でした。そこに論理的な思考はなく、ただただ感情があるだけでした。

 ではなぜ戦後になっても「~したらダメ」という教育を続けているのかといえば、教える側が自分で思考する能力が低いからです。そしてそれは「~したらダメ」という教育の成果です。昨今、この風潮を改革してやろうと働き方改革とか日本はアレコレやっていますが、根本であるところの「~したらダメ」を上も下も改めません。改革がうまくいくわけがないのです。そして改革がうまくいかなければ、いつまでたっても経済は浮揚しません。平成以降の不景気はこれが原因なのでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿