時事ニュースのデータがサーバの不具合で飛んでしまったので、本日は代替原稿です。
「古代オリエントの神々」(中公新書)という本を読んだ。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07RWJ1D7D/
中東-アフリカ-地中海系の神々がどうやって生み出され、使い回されていったかを追いかける本です。
たとえばギルガメッシュはもともとメソポタミア神話の主役ではなく、イシュタルやエレシュキガルがもともとの主神で、ギルガメシュが自分の逸話にメソポタミア神話の古い神々を登場させたり、古い神々の逸話に自分をねじ込むことで主神の地位を奪ったという話がのっています。地中海の神々はだいたいこんなかんじで、人気のある古い神々は新しい神々に退治されたり引き立て役になります。それは古い神々をあがめていた民族の栄枯盛衰にもつながるので、神話を読むことが民族の歴史にもなるわけです。
日本神話もイザナギ・イザナミが主神ですが、アマテラスに主神の座を渡して冥界の番人になっています。メソポタミアの冥界の番人エレシュキガルももともとはイザナミのように地母神でしたが、ギルガメッシュに座を譲って冥界に引っ込んでいる。日本神話とメソポタミア神話は構造がよく似ているわけですが、これはもともと現地住民の神話に、よそからきた征服者の神話を上書きしたから起こる構造だとすると、似ている理由がわかります。神話の役割は、王権の継承に正統性を与えることなんですね。
そこまで考えると、大日本帝国の国家神道は太平洋戦争で神話の書き換えをやろうとして失敗したんだなとわかり、感慨深いものがあります。歴史を持たないアメリカは、歴史を武器にするという発想がなかったから、日本は敗戦しても神話や歴史の上書きを(ほぼ)免れました。しかし、中国やら韓国やらロシアやらが日本を占領していたら自分たちを主役にした神話や歴史の上書きをしていたことはまず間違いない。逆にいうと、これから日本が戦争をできる国家になるには、仮想敵国の神話や歴史を上書きするくらいの覚悟も必要ということになります。いまの日本にそういうことができるかどうかという話ではなく、相手の抵抗力を削ぐということを念頭にすると、必然的にそこまでしなければならないという話。国家の防衛とは良くも悪くもそういうものだという話です。ロシアとウクライナがやってる戦争も最終的にはそこまでやらないと終わらないのでしょう。できるかできないかではなく、戦争を終わらせたかったら相手の大義名分を神話時代にまでさかのぼって書き換える。そこまでの覚悟と蛮勇がある者が戦争をはじめることができるわけです。
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