2023年12月6日水曜日

中国の歴史 近・現代篇1~2巻

ちょっと所用で海軍広報はおやすみ。かわりに駄文を掲載します。

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 時代小説で有名な陳舜臣が書いた「中国の歴史 近・現代篇1~2巻」を読んだ。
 清朝末の中国史を書き下ろしたシリーズで、この時代をあつかった歴史書は珍しい。ちょうどジャッキー・チェンの「プロジェクトA」くらいの時代を扱っていて、この本を読むとプロジェクトAの時代背景がよくわかります。
 さて、日清戦争に負け、台湾をとられた中国は、明治維新を参考に、皇帝を擁しながら近代化を達成する変法派が台頭。一方、西太后を擁する保守派は一切の改革を拒み、軍事力を握って変法派を弾圧。

 清朝末の中国人は教育熱心です。そのため維新をするだけの意欲や人材はあるのですが、清朝では軍事力を満州族に独占されています。この軍事力については血統がすべてで科挙のようなものもなく、保守的で能力も低く、時代に取り残されています。そのため維新をしたい進歩的な人間が騒げば騒ぐほど、武力を持った頭の古い人間が激怒し、弾圧される悪循環に。支配する側の満州族にとって、国の近代化は自分の地位を下げるだけなので意味がないのです。
 さて、中国は日本と比べると弾圧も大がかりで、それは共産中国だろうと清朝中国だろうと変わりません。また、中国ではやたらと暗殺が起きます。日本の維新でも暗殺騒動は多かったのですが、その比ではない。というのも維新とは関係なく、昔から職業暗殺者が市井にいて、暗殺を仕事として請け負っていたからです。官側も暗殺者を普通に雇い、邪魔者を消すのに余念がなかった。この暗殺で変法派は身動きがとりにくく、実際に死んでいる人材も多くいます。

 視点を変えて、封建主義だった日本は地方政府が中央から独立しており、薩長などの地方政府が反乱をバックアップしました。しかし、清朝時代の中国は各省の長官は中央から派遣されるため、反乱は起きにくく、たとえ起きたとしても地縁が薄いためまとまりが悪いのです。仮に地方が長官を取り込み、独立しようと根回しをしても定期的に人事異動があるので、地縁を深める時間が足りません。ゆえに日本と違って地方政府が反乱を起こすことは難しいのです。
 地方政府が役立たないとすると、変法派はどこに武力を求めるのか。それは地元のヤクザ組織で、孫文らは三合会などを動員しています。このヤクザががまた当てにならず、軍資金がなければ解散し、武器調達に失敗すると解散し、ようやく武装蜂起にこじつけると密告で一網打尽になる。このあたりが、やはりヤクザの組織力と地方政府の組織力の差なのでしょう。
 清朝の統制力が落ちるとともに、やがて軍閥というものが台頭してきます。軍閥は常備軍が駐屯地で私兵化されたもの。地方政府と違って中央からの派遣がないため、後々、群雄割拠の地盤となります。

 常備軍といえばもうひとつ、塞防派と海派が生まれています。要するに港湾に要塞を作って防衛しようという陸軍派閥と、艦隊で防衛しようという海軍派閥です。なぜそれが派閥化するかといえば、支配者である満州族が陸軍派閥で、海軍は漢民族が中心になっているからです。この陸海の派閥対立の構造が現代までそのまま残っている節があるのが面白いところ。
 まとめると保守派も変法派も日本の明治維新を参考にして近代化を目指すのですが、中国固有の政治事情が邪魔をして、ものすごい回り道と人材の無駄遣いをした結果、やっぱりどうにもならない感じでグダグダになっていく課程がよくわかります。そういう意味では読んでいて辛いものがありますが、現代中国を理解する上では避けては通れない時代といえるのでしょう。理解したから好きになれるわけではありませんが。暗殺しすぎですよ。

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