2026年7月18日土曜日

日本の革命思想の輸出と朝鮮経済

 明治の頃の朝鮮の歴史をざらっと調べた。
 通常の歴史とは違って貿易に注目して調べたので、ばっさり単純化していることをあらかじめ断っておく。
 日本の幕末頃まで、朝鮮は政治・経済システムを鎖国前提で設計していた。江戸時代の日本がそうだったように飢饉が何度も訪れる状態だった。日本も含めて、中世の国の経済システムなんてそんなものだ。そして、日本の幕末と時を同じくして朝鮮も外国の圧力が強くなり、武力で脅され、いやいや開国して貿易をはじめるようになる。
 いうまでもないことだが、国際貿易は輸入品と輸出品のバランスで収支が決まる。朝鮮政府は外国の武器を買ったが、その代金として食料を輸出した。これは、いままで鎖国していたため、海外へ輸出できる有力な商品が食料以外になかったからだ。問題は食糧が底値で買われ、武器は高値で売りつけられたことだった。これが意味することは、ほんのちょっと軍備を揃えるために大量の食糧が必要になること。

 もともと朝鮮は鎖国体制だから、農村の生産力は国民を喰わせる程度しかない。飢饉が起きれば食糧不足になり、餓死も発生する。つまり、食料生産力に余剰がないのだが、政府は輸出用の食料を生産者である農村を直接、絞って手に入れた。重税化である。この政府による食料収奪が慢性的になり、そのうち農村が飢えて反乱が起きるほど治安が悪化する。朝鮮政府はこれを自力で鎮圧できず、日本や清国といった外国が政府にかわって鎮圧する。これが朝鮮に外国軍が駐留する理由になった。そして外国が朝鮮内部の利権を求めて政治に介入する導線となった。
 ちなみにどうでもいい話ではあるが、鎖国を解いた朝鮮は国内の様子を外国人に公開している。この時期の朝鮮の農村部や都市の末端部を描写した本に、極度に貧しいという描写が多いのはこの政府の収奪も理由のひとつだろう。そしてこの時期に朝鮮に訪れた人たちによって、朝鮮は昔から貧乏な国だったというイメージがつく。そしてそれが見聞録などで国際的に拡散され、浸透した。その意味では少しかわいそうなところがある。
 ともあれ、朝鮮政府はこの内乱と外国の介入で国民の信望を落とす。かといって彼らにかわって政治ができる人材もいない。そもそもの問題点である輸出品がないという問題を認識している人材が国内にいないからだ。もっともこれは当然の話で、昨日まで鎖国していた国に、国際貿易を理解している人材がいるわけがない。そういう人材がいた日本が異常なのだ。

 そういう人材を一から育てようと、朝鮮はアジアで唯一近代化に成功した日本に学生を留学させる。すると、留学生はクーデターで旧弊を壊して一気に開国しようという過激思想に染まって帰ってくる。日本の明治維新に学べばそうなる。明治維新は立派なクーデターであり、その後に強引な国内改革を行い、輸出品を作成したという順番になるので、その順番通りに行おうとすると自然にクーデター思想に染まってしまうからだ。
 実際のところ、輸出品の作成には、クーデターは必須ではない。当時の朝鮮政府が日本に求めていたのはクーデターに頼らない輸出品開発の手法だったが、経済学が黎明期の時代だ。輸出品開発なんてまだ明文化されていない。だから、政治から経済から何もかも日本に学ぼうとすると、どうしてもクーデター思想に染まってしまう。朝鮮は食料収奪による反乱と粛正で国家と人材が弱体化していた。そして残っていた貴重な人材も日本でクーデター思想に染まってしまった。もうお手上げだ。そして日本に併合された。併合した日本は農村の改革やらインフラの整備とか国内改革をやって、政府が農村から収奪せずに自力で貿易できる体制を整えたが、有力な輸出品を作るところまでは手が回らず太平洋戦争の敗戦を迎えて撤退する。そこからいろいろあって、日本の二番煎じと呼ばれながら、朝鮮人が独力で輸出品を作るところまで国を育てた。

 この朝鮮の貿易の歴史を知っていると、韓国人が日本人に持つ反感がわかるような気がする。日本が輸出品作成という実学ではなく、維新という過激思想を教えたから朝鮮は大混乱に陥って破綻したんじゃないか、と。一方、日本人は維新を美化しているから、維新が過激思想とは思わず、近代化の特効薬と考えて善意で輸出した。ここの差異だ。朝鮮人から見て、維新思想の美化はものすごく迷惑なので輸出をやめてほしい。そして日本人は自分のやったことをすこしは反省しろ、と。これが日本人に対する反感のすべての根っこになっているのではないか。慰安婦が~とかでよくいわれる「日本人は反省しない」という評価もこの反感が底にあると思うと、納得はできないが感情的には理解できる。
 もっとも、そんなの日本人からするといいがかりもいいところで、「知るかボケ」で終わってしまう話だ。しかし、実際にトラウマを与えられた側に「知るかボケ」という態度を取ったら喧嘩になる。実際、喧嘩になっているが、いつまでもそのままでもいられない。朝鮮人のトラウマと、「日本人は反省しない」という評価を覆したかったら、韓国の歴史教科書に日本は無意識に維新思想を輸出して朝鮮に混乱をもたらしたが、いまではそれを反省し思想の輸出をやめたという一文を加えるといい。実際、それは事実で、戦後日本のODAは思想の輸出を省いた実学だ。そう記載すれば彼らのトラウマも評価も改まるだろう。「歴史を作る」とはそういうことだが、それを日本の教科書にそのまま載せるのは、それはそれでハードルが高い。何度も繰り返すが、日本人にとって韓国の国民感情は教科書で深掘りするほど価値も重要度も高くないからだ。

 韓国人は日本人が「気にしすぎ」と思うほど細かいことを気にする。気にするというのは、彼らにとってそれだけ日本の比重が重いからだ。一方、日本は韓国に興味がなくて、気にしていない。日本が気にするのはアメリカで、日本はアメリカに対してトラウマを持っている。教科書の扱いもアメリカは大きい。一方、アメリカは日本に興味はなくて、日本がそうして欲しいほど気にしていない。
 小国が大国に興味を持ったりトラウマを持ったりするのは、別に日韓関係だけの話ではなく、日米関係もそう。自然の話なのだ。だから、大事なのは当時の状況を客観的に見て理解したうえで、自分の気持ちに整理をつけることだろう。この理解と整理が下手だと、いつまでも引きずる。「慰安婦がー」と叫び続ける人を見ていると、そう思う。ちなみに日本の反核団体や野党の「ヒロシマがー」もその一種だろう。大国への道徳的レジスタンス。世界中どこにでもあるマウント取りで、その意味では日本も韓国も理解と整理が下手なのだろう。

 ここからは別件。朝鮮の経済を調べていて思ったことだが、仮に朝鮮でアラブのように石油や希少鉱石が大量にでてそれを輸出品とすることができたらどうだっただろうか。掘れば輸出品が出てくるのだから、朝鮮は国家を近代化する必要もなく、古い政府や制度をそのまま残して、日本や中国に占領されることもなく今日まで生き残ることができたかもしれない。そうしたらトラウマは発生しないから、あの国と日本の歴史も付き合い方も変わっていたかもしれない。逆に、埋蔵資源目当てに外国に占領されて彼らは今よりもっとひどいトラウマを抱えることになったかもしれない。そういう世界線も考えてみると面白いだろう。

 この話は、別にオチはないのだが、かつてソビエトがやっていた革命思想の輸出を、日本が明治から昭和までやっていたというのは、世界史への影響を含めて比較すると学問的に面白いだろうなとは思った。

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