2026年3月19日木曜日

希少価値な友人

希少価値な友人
 近代以前の日本が、ヨーロッパと比べてハッキリとした階級差ができにくい(ないわけではない)社会だった理由について考えよう。
 近代以前の日本には異民族といえるほどの異民族がなく、言葉もそこそこ通じた。物理的な階級差を作る城壁が都市になく、台風や地震などの自然災害が多く、財産を蓄積しても災害でなくなる可能性がヨーロッパよりもはるかに高かった。これが、近代以前の日本で階級差ができにくかった理由だろう(河原者や非人などの例外はあるが、他国と比べるとそこまで強い階級差ではないという意味で)。
 しかし、現代になって多少の地震や台風ではビクともしない強靱なインフラが整った。財産を蓄積する意味が増し、以前と比べて階級差ができやすくなっている。かわりに累進課税や相続税など近代以前にはなかった税制があらわれているが、それでも財産を蓄積する意味が増えた。過去の日本と現代の日本では日本人という民族の変質が起きている。同時に階級差もできやすくなっているといっていいだろう。

 わかりやすくいえば、「江戸っ子は宵越しの金を持たない」という階級差を作らない倫理観は、江戸に火事が多く金持ちも貧乏人も等しく財産が全焼する事が多いから生まれた価値観だ。現代のように、多少の火事では人や財産も失われないし、金があれば難病でも治療できる社会においては馴染まない価値観で消えるのが当たり前といえる。
 ところが「昔は良かった」「昔の人は偉かった」「武士は日本人の誇りだ」という時代背景が違う人間のモラルを賞賛する人々がいる。なろう小説なんかで、現代日本の価値観を異世界に持っていって赤っ恥をかく話があるが、彼らは現実でそれと同じことを恥ずかしげもなくしているのに、それに気づいていない。

 宗教の価値観というのも実はそれに近い。たとえばイスラム教に豚肉を食べてはいけないという戒律があるが、あれは食品衛生が進んでいない時代に作られた戒律で、豚肉は牛肉や羊肉よりも食中毒の危険があるから食べてはいけないと定められた。しかし、食品衛生が進んだ現代では意味がなくなっているのだが、宗教的戒律なので廃止が難しく、イスラム教徒の一部はいまだに豚肉を食べられない。つまり、古い宗教で戒律が厳格なほど、現代では馴染まない不合理な戒律が残っているということになる。
 その不合理な部分を飯の種にするのが「原理主義者」といってもいいだろう。原理主義者というと、なんとなく宗教的には優れているような印象があるが、実際はそんなことはなく、豚肉の話を踏まえると間違ったイメージだとわかる。
 ではなぜ、原理主義者が優れているように思えるかといえば、宗教とは信じることだという間違った思い込みがあるからだ。正確には、「信じなければならないこと」と「信じなくても良いこと」がごっちゃになっているのだが、そこの切り分けをせずに、全部を信じてしまっている。

 良い宗教と悪い宗教って区別がつかないものだと一般人は思いこむけど、じつはこの「信じなければならないこと」と「信じなくても良いこと」を切り分けて信者に教える宗教は良く、切り分けない宗教は悪いという区別ができる。イスラムだっていろいろあって、切り分けのできるイスラムもいるし、そうでないのもいる。そうやって良い宗教と悪い宗教の区別が付くということは、政治に口を出す宗教の善し悪しも判別がつくということだ。
 別にコレは宗教に限った話ではない。国も自治体も会社も家族も個人も「切り分けて考える」ことができないのであれば、「悪い」組織と判定できることになる。
 たとえば憲法改正に絶対反対する政党は「悪い」政党だ。なぜなら豚肉禁止と同じように、憲法にも時代経過とともに古くなっている部分がある。その修正を嫌うのは、その組織や人が「切り分けて考える」ことができないからで、それは原理主義的な体質を持つ悪い政党だということになる。

 そこまで考えなくても、身近に適用してもいいだろう。自分や他人や所属している組織を判断する基準に、お金や信用や愛情などがあるけれど、それとは違った基準で人や組織を判断してみるのもよいことではないだろうか。もしかすると、お金や信用や愛情はないけれど有益な友人が見つかるかもしれないから。そういう友人は希少価値といえるだろう。
逆にお金や信用や愛情があっても、「切り分けて考える」ことができないなら、友人関係を見直した方がいいかもしれない。そういう基準で自分の交友をちょっと考え直してみると新しい発見があるだろう。

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